子供に土地売却は「資産隠し」~親子間・親族間売買の問題
診療報酬を不正受給していた旧花園病院(大阪府東大阪市、昨年廃院)の元院長が、奈良市内の不動産を親族に売却した後、無資産を理由に不正受給分の返還を求める自治体の請求に応じていないことが分かったとのことです。八尾市は売却が差し押さえを逃れるための「資産隠し」と判断して大阪地裁に提訴。一方、元院長の代理人の弁護士は「適正な価格で売買は行われている。売却益は旧病院職員の退職金などに充てられ、市に返済するまでの金がなかった」と主張しているとのことです。
市が元院長の資産を調べたところ、2008年7月頃、奈良市学園中にある元院長名義の土地計約7百平方メートルが、2人の子供に売却されていた。元院長の弁護士の説明では、売却額は約6000万円で、旧病院職員の退職金や、取引業者への債務返済に充てられ、法的に問題はないという。ただ、市債権管理課は路線価や周辺土地の取引価格から、売却された土地は6000万円を上回ると見積もったとのこと。元院長はこの土地に建つ自宅に現在も住んでおり、市は差し押さえを免れる目的の「資産隠し」と判断。元院長らを相手取り、売却の取り消しと不正受給分の返還を求め、大阪地裁に2009年8月、提訴したとのことです。
これに対して、元院長の弁護士は「売買や価格も適正」と主張。土地取引で金を用立てたことについては「子供から金を借りても、元院長は高齢で返済する力がない。売買をきっちりして、お金を払ってもらった」と不正を否定しているとのことです。
親子間・親族間売買の問題点は、「財産隠し」になりうる状況なのか?、「売買価格は適正」なのか?ということにつきるものと思います。ただ、今回のケースでは、不正受給をしていた元院長という点で、あまり印象が良くないのに、適正価格であるというには、多少の誤差を超える価格であったということなんでしょう。親子間・親族間売買をお考えの方は一考に値するケースだと言えます。