債務弁済事例9:借金の返済が厳しい両親のため実家を新設法人で買い取りその資金で借金を返済した事例
概要:両親は会社を営んでいるが、借りている金融機関への返済と急場をしのぐため借りた親族への借金返済で苦しんでいた。借金の返済が詰まり、親族から全額を返して欲しいと言われたため、自宅(実家)を息子と娘を役員とした新設法人で買い取り、その資金で返済をした。
不動産の種別:マンション 売主:父親 買主:新設法人(母親、息子、娘が役員)
売買時のローン:必要 不動産の時価:6,000万円
ローン残高:1,200万円(他に事業ローン2,000万円・親族からの借り入れ700万円の計3,900万円)
希望ローン額:3,900万円+諸費用(実際は4,800万円借り入れ)
相談内容:
父はその弟と一緒に祖父の代から建築関係の会社を営んでいる。ただ、資金繰りは苦しく、自宅(実家)の住宅ローン残高1,200万円の他に事業ローンで残高2,000万円、そしてコロナ禍の急場をしのぐため複数の親族から計700万円を借りていた。返済だけで毎月40万円ほどとなり、生活費を入れられていない。生活は母の収入と、息子である自分と妹の会社員として収入で維持している状態であった。
そのような折に、いつもは会社に対してつなぎでローンを出してくれていた金融機関から、コロナ禍が過ぎたので融資審査の見直しが入り、今後はローンを出せないという連絡が入った。何回か訪問しても本部の指示なのでと一点張りでどうにもならない。慌てて他の金融機関へ周るも、決算書を一瞥するとローンは厳しいとの回答となり解決はできなかった。追い打ちのように他の親族からも貸しているお金を全額返済して欲しいと打診がきた。そのため今月はしのげても近いうちに資金がショートすると判断をした両親は、唯一の資産である自宅を売却することに決めた。
ただ、売った後の生活を考えると、家族5人(祖母もいるため)で暮らす賃貸住宅を借りるとなると安くて毎月20万円ほど、普通の住宅だと25-30万円はかかってしまう。たとえ6,000万円で売却し、借金3,900万円を返済した後に残った2,100万円も毎年賃料で240万円から360万円もかかるとなると7-9年で消えてしまう。それでは厳しい。そこで家族で検討をした結果、息子からローンを組んで買っても良いという提案があったので、親子間での自宅売買を検討することになった。さっそく金融機関に訪問。しかし、会社で借りている金融機関は、残念ながら・・と融資課長は親子間売買でのローンは難しいとの回答。他の金融機関もそれと似た回答であったので、ネットで探した弊社に相談をしにご来室をいただいた。
問題点:
1)自宅を息子に住宅ローンを組んで買い取ってもらうことは可能か
2)難しい場合、他に良い方法はないだろうか
3)自宅を買い取る妥当な価格はいくらだろうか
解決方法:
相談は家族の関係者全員(父、母、息子、娘)でご来室いただいた。親子間売買の背景を聞き、年収を伺うと母は年収350万円、息子は年収400万円、娘は300万円ということであった。問題点の1)となるが、父の住宅ローン+事業ローン+親族の借金=3,900万円、これに加えて諸費用を仮に200万円とするとローンは4,100万円ほど必要となる。一般的にはローン額は年収の7倍を目安とするので息子の年収400万円×7倍=2,800万円が目安で、対して4,100万円はかなり超過。様々な条件をつけて年収の10倍は可能だが、それでも4,000万円なので難しい。息子だけの話では厳しそうと伝えた。それなら母か娘(妹)を連帯債務(年収の合算)で付け加えればどうかとなるが、残念ながら母では年齢の関係で融資期間が短くなってしまう。融資期間が短くなると毎月の支払負担が大きくなる。それだと、「本当に毎月ローンの支払いができるのか?」となり、ローン審査が下りない可能性がある。一方、娘は兄妹の連帯債務はNGとする金融機関も多い(理由はいずれ結婚で世帯が分かれるので、ローンの支払いが安定でない)が、融資してくれる金融機関があり、条件を満たすようにすればOKと考えた。それを伝えたが、母は「娘には協力して欲しいけど、それが将来の足かせになって欲しくない」という希望であった。他のお客様もそうだが、娘が買主になる場合は結婚等で制限を受けないようにしたい、特に母親からの希望としてそのような話は多くある。1)は厳しいという話になった。
そこで2)となる。弊社の方から複数の提案を出した。その中で最善は新たに法人をつくって、その役員に息子を代表、母と娘を役員とし、そこで買い受けるというもの。デメリットは法人の維持管理に手間暇がかかり、そして法人税がかかるという話。赤字なら均等割り(この場合は年6万円ほど)となる。メリットは大きく、息子、娘とも他に住宅ローンを組めるし、役員を抜ければ責任や制限はないというもの。母の懸念点もこれなら全て払拭できるようになる。また、今でも会社を経営しているので決算の申告その他慣れているのも良い。この点が良いのではないかと思い提案した。
さすがに検討する時間が欲しいということで相談日は終えたが、数日後には新設法人での案で進めたいという連絡を受けた。なお、本当にその通り(娘への制限、制約)にならない場合は、弊社で自宅を買い取って、お客様に賃貸する保証も入れることにした。
しかし、問題が1つ出てきた。3)であり、債務の3,900万円+諸費用仮に200万円=4,100万円をローン額として、そのまま売買価格とすると、査定価格6,000万円に対して安すぎることだった。融資をする金融機関に確認したところ、どこも安すぎるので低廉譲渡を懸念され厳しいとの回答。税理士に確認をしたらこちらも「うーん、どうかな」と懸念点は払拭できなかった。弊社と提携する不動産鑑定士もどんなに安くても4,000万円後半が時価という回答。そこで、金融機関に確認すると5,000万円ぐらいまで融資は出せるので4,800万円ぐらいを売買価格&ローン額にするのはどうかと逆提案があった。ちなみに、4,800万円のローンを出してもらうと手元には700万円ほど残る。それで、ローンの返済に充ててもらいつつ、生活再建してもらうのも1つの手だと感じた。そこで、お客様にはA)リスクがあっても安く売買価格は4,100万円とするか(=ローンの毎月の支払額は安い)、B)融資額を増やして手元金をつくり、ローン返済と生活再建に余裕を持たせるか、のどちらが良いかを確認したところ、あっさりとB)という回答となった。4,800万円でも毎月18万円強の支払いが大きかった。今まで毎月40万円の支払いと比べたら余裕ですとの回答であった。なお、3)は4,800万円で妥当という鑑定評価書を作成して税務署の抑えたとした。
あとは流れ作業となり、融資審査を経て承諾、新設法人の登記を行い、父親と新設法人で売買契約を締結。その後、ローン実行を行い登記名義移転してこの問題は解決した。すっかり借金がなくなったので父は「気が緩みますが、妻や息子、娘への借金に成り代わっただけですから、しっかり返せるように頑張ります」母、息子、娘は「賃貸だと変な家で毎月20万円ですから、18万円でこの家なら断然こっちで良かったです」という話であった。
同じような事例でご相談がある場合は、是非当相談室までご相談ください。