生活支援事例4:老後の生活費をつくるために親の家を子供が購入した事例
概要:
不動産の種別:一戸建て
売主:母親 買主:娘(長女)
売買時のローン:必要
不動産の時価:2,200万円(1,400万円) 住宅ローン残高:借り入れなし
希望ローン額:1,400万円 自己資金 :200万円
ご相談内容:
一人暮らしをしている母親が入院をした際に、病院へ支払いをしようと思い母親の通帳を確認した。そうしたら貯金がほぼなく、入院費を支払ったら生活資金が底をつくのではないかと不安になったとのこと。母親は質素な生活を送っており、亡くなった父親が会社を退職した際の退職金があるはずなので、それなりに老後の生活費があるものと思っていたのでショックとのことであった。理由を母親に聞くと、ガンで入退院を繰り返していた父親の入院費、そして自分も入退院を繰り返すことで貯金がなくなってきたとのことであった。娘である自分に何故言わなかったのかと確認をしたら「心配をかけたくなかった」というので、今からでも何らかの対応をすることにした。
当初は実家を売却することで売却資金を老後生活費とし、母を自宅(持家・主人名義)に引き取ることを考えた。母との同居は夫や子供たちも同意してくれたが、スペースの問題があり、母には独立した部屋を用意できなかったことで、母からは気持ちは嬉しいけど一緒には住めないと言われてしまった。今度は他の県に住む弟に母との同居を打診したところOKであったが、こちらも母が難色を示して同居はしないことになった。話は振り出しに戻ってしまった。
そのようなときに広告で見たリースバックという方法が解決策で浮かんだ。不動産会社に実家を買ってもらうことで老後の生活費をつくり、実家を賃貸で住み続けるものである。母親に話をすると賛成だったので、リースバック各社から見積りを取ることにした。しかし、見積書を取ると相場の2,000万円ぐらいの買い取りではなく、もっと安い1.200万円前後の価格が多く、賃料も月10万円以上と想定よりも高く出てきたので決められなかった。月10万円の賃料を支払っていくと、買取資金は賃料だけで10年でなくなってしまう。老後資金に使う余裕がないので意味がない。それを夫と弟に話をすると「それでは意味がないので辞めた方が良い」と言われてしまった。
そこでリースバック会社に賃料を下げてもらうか、買取価格を増やしてもらうことの相談をしたら、その対応は会社の決まりでできないが、お客様(娘)が実家をローンで買う親子間での不動産売買なら希望に沿うかもしれない、という提案を受けた。自身(娘)は契約社員で年収350万円ほどある。十分検討はできるとのこと。買取価格を2,000万円とした場合は、ローンの返済額は約月9万円。賃料として同額を母からもらえば自身の負担はない。また買取価格は2,000万円もあるので、老後の生活資金で1,000万円使っても、10年は住める計算となる。もし何かあれば売却すれば良いので問題は少ない様に思えた。前に反対をした夫と弟も賛成であったので、さっそく依頼をした。
ところが依頼してすぐ、夫が住宅ローンを組んでいることから、そもそも住宅ローンを利用することができないことが分かった。ただ、解決策はこれしかないと思っていたので諦められなかった。何とかできる方法はないものかとネットで検索をしていたら、たまたま親子間売買に関する弊社のホームページにあたった。電話で問い合わせをしたところ「できるかもしれない」という返事であったので、詳しい相談をするために来室することになった。
問題点:
1)夫が住宅ローンを組んでいるのに別に親子間売買を理由とした住宅ローンは組めるか
2)親から家(実家)を買い取る別の方法はあるのか
解決方法:
お話を伺う限りでは、夫が住宅ローンを組んでいること、購入する実家には住まないことから、住宅ローンは厳しいと判断をした。実際にその後に各金融機関に確認をしたところ、やはりハードルは高いとの返答であった。※年収など一定の条件をクリアすれば可能な場合があるが、お客様のケースだと厳しいという回答であった。
しかし、アパートローン(投資用ローン)やセカンドハウスローンなど自身が住まないことを前提としたローンなら可能であるので、その旨の話をしたところ奥様(娘)はローンとして借りられるなら構わないということであった。
住宅ローンとアパートローン等との違いでデメリットは1)住宅ローンほど金利が安くない(=ローンの返済額が増える)、2)住宅ローン控除などの税控除が利用できない(=負担の軽減ができない)、主にこの2点となる。
一方でメリットもあり、1)他に住宅ローンを組んでいても利用できる(今回はご主人が住宅ローンを組んでいる)、2)実際に住まわなくとも問題ない、3)賃料収入などを加味して融資額を検討できる、などがある。これらのメリットとデメリットを一緒に検討した結果、アパートローン等の利用で決まった。
もう1つの問題である別の方法がないかでは、弊社では割賦(分割)払いによる母親からの買い取りが得策であるように思えた。実家を分割払いで購入することで、毎月売買代金の支払いで母親の生活資金を支援できるし、ローンを絡まなくとも済むので手続きが簡便化できる。ただ、この案については、老後資金を一括で渡したいという条件の優先順位が高いとのことで見送りとなった。他にも複数案を一緒に検討をしたが、この割賦払いよりかは条件等が良くないため最初のご相談で検討をしない結果となった。
上記から、アパートローン等を利用して親から子供が家を買う、親子間での不動産売買を行うことになった。方策は決まったので弊社提携の金融機関に打診をしたところ不動産の担保評価、賃料想定収入、契約社員としての年収などを加味して融資額の上限額は当初は1,500万円、その後交渉をして1,800万円まで検討可能という回答が得られた。希望の2,000万円という結果は得られなかった。どうするか相談をしたところ最終的には融資額が大きい=ローン返済額が増えることもあり融資額は2,000万円もいらず、ローン返済額を6万円ぐらいとして逆算した1,400万円の融資額を希望することになった。それでも老後生活資金で700万円使っても10年は住める計算となる。なお、ローン返済額の約6万円分は賃料として母親からいただくことにしたが、母親の支払いが厳しくなれば1度もらってから贈与で返金することを決めた。これでお金周りの問題は解決の道のりが見えてきた。
あとは時価の算定だが、普通に査定すると2,000万円前後となる。そのため、融資額1,400万円をそのまま売買価格とすると安すぎる恐れがあった。そこで弊社提携の不動産鑑定士に相談をしたところ、不動産に擁壁があり建築基準法上の問題があること、建物に若干の傾きがあることから減額は可能となったので、時価1,400万円でも妥当との鑑定評価書を取得することができた。
ご相談いただいてから1ヵ月強の時間がかかったが、事前の準備は完了した。ここで税額チェックを行い問題なし、また資金計画を元にした諸経費もお伝えして弊社との業務委託契約を締結した。弊社の方ではさっそく業務に入り、用意をした審査書類を金融機関に提出をして親子間売買におけるアパートローンの審査に入った。事前に金融機関と口頭でやり取りをしていたため、約1ヵ月弱で無事、審査承諾となった。あとは流れ作業となり、母親と娘で実家の売買契約を締結、その後に売買代金の融資実行と所有権移転登記を行った。将来相続時に揉めないように弟にも確認の署名捺印をいただいた。最後に賃貸借契約を母親と娘で締結を行い、支払いができるうちは月6万円の賃料を支払うことを約した。来年の確定申告の案内を終えて一連の手続きは終えた。
母親と娘とも手続きを終えた瞬間は「ようやく終わったね」という話をされていた。老後の生活資金が入り、嬉しい気持ちもあったのだと思う。
同じような事例でご相談がある場合は、是非当相談室までご相談ください。