トラブル事例3:自宅を買ってもらった知人が借金返済のため退去して欲しいと言ってきた事例
概要:自宅を買ってもらった知人が借金返済のため退去して欲しいと言ってきた事例
不動産の種別:一戸建て 売主:母親の知人(会社経営) 買主:息子
売買時のローン:あり 不動産の時価:3,000万円
ローン残高(債務含む):なし 希望ローン額:なし
※ご自身様か他社様による親子間・親族間売買によって生じたトラブルの事例です。
相談内容:
母親と一緒に住む息子からのご相談。3年前に母親が住宅ローンの返済ができずに銀行から家を売ることを薦められていると言われ、親子間での自宅売買を計画した。その時は急な話であり、残高1,500万円の返済をするためにローンを組むことに躊躇してしまったとのこと。そのような状況が2ヵ月ほど過ぎてしまい、まだ親子間売買について逡巡していたところ、焦った母親が知人に相談を持ち掛けた結果、その知人に家を買っても良い、そのまま賃貸として住んで良いと快諾を得た。そこで、すぐ母親の知人に自宅を売却してローンを完済した。なお、自宅の時価は不動産会社の査定で3,000万円ほどであったが、売買価格は将来買い戻すことを想定して、完済するローン残高1,500万円前後とした。
3年間ほど問題なく住んでいたが、急に知人から連絡があり、会社経営が厳しく家を売却しなければならなくなった、ついては退去して欲しいという連絡を受けた。それは話が違うとなり、今回は息子である自分が購入しようと、知人が依頼をしている弁護士のところに赴いたところ「3,000万円で買って欲しい。そうでないと債権者から同意を得られない。難しければ競売となる」と説明を受けたとのこと。「3年前には1,500万円で売っているのだから1,500万円で買い戻したい」と納得がいかず反論したものの、「それはあなたの母親と知人の同意した金額であり、今回の話とは関係がない。時価の3,000万円で買っていただけるなら同意できる」と断られてしまう。納得がいかなかった息子は3年前に親子間売買の調査の際に知った弊社に相談をしに来た。
相談の論点:
1)1,500万円で買戻しはできるのか
2)他に良い解決方法はあるのか
解決方法:
知人や友人への不動産売却はA)買い戻せなくとも諦めがつくとき、B)時価で売ることができるとき、この2点が前提となります。そうでなければ、知人や友人への売却は断念した方が良いです。トラブルになるからです。
このケースのように時価より安く売るなら、後で差額を返して欲しいと言わないこと、それが時価であると自身で納得することが必要です。知人や友人の経済状況を知ることはできません。また、説明を受けても正しく伝えてくれているのかは分かりませんので、後日他の方に売却すると言われても、そのようなものと割り切るしかないのです。
また、弊社の事例では、そのまま知人に家を取られた、という方もいます。知人に売却し、同時に2年間の賃貸借契約を結んでいたが、その2年間が経ってそろそろ賃貸借契約書の更新をと思っていたころ、当初言っていた永久に賃貸するという口約束は反故にされ、「帰ってくる娘夫婦に住まわせるので退去して欲しい」と言われたそうです。法律上どうしようもなく諦めたそうです。ですので、この2点は必須と肝に銘じてから知人友人に売却しましょう。そうでなければ、親子間・親族間での不動産売買をした方が急な退去を求められることや、トラブルも少なく確実と言えます。
今回のケースでは1)はまず無理でした。弁護士に聞くとその知人は1億円以上の債務があり、債権者に請求をされていました。当然、知人の財産である自宅も債務者に把握されており、自宅の時価が3,000万円であることも分かっていました。そうなると、時価での売買以外は不可能ですから、3,000万円で買い戻さなければならないことを説明いたしました。しかし、相談者の退去費用はかかる経費として計上しているはずです。多少なりとも安く買える可能性はありそうです、と伝えました。
2)もこの段階では残念ながらありません。自宅に住み続けたいのなら、買い戻すしかありません。知人と債権者が売却で同意なら、借家人であっても売買の部外者である方は他に方法はないのです。
そのことから結論としては、住み続けるならできるだけ安く買い戻す、という方針で進められたらいかがでしょうか、と説明をいたしました。その後、弊社に依頼をいただき退去費用関係の書類をまとめて、弁護士を交えて交渉の結果、2,600万円で債権者の同意を得られて知人から息子への売買は完了いたしました。1,500万円での買い戻しは難しかったですが、せめて3,000万円より安い2,600万円で買い戻せたのは良かったと思います。
同じような事例でご相談がある場合は、是非当相談室までご相談ください。