兄弟姉妹事例2:兄弟の共有名義を解消した事例
概要:
相続の際に、兄はそのまま実家に住むので、実家の一戸建ての建物を兄が100%(持分1/1)、土地は兄と弟で50%(持分1/2)ずつとした。ただ、それから年月も経ち、子供の世代に残すため、共有持分を解消できないかと相談しに来られた。
不動産の種別:中古戸建
売主:弟 買主:兄
売買時のローン:相談内容次第
不動産の時価:3,500万円(土地の持分1/2相当) 住宅ローン残高:なし
希望ローン額:相談内容次第
ご相談内容:
18年前に父親が亡くなった際に、一緒に住んでいた兄に実家(一戸建て)を相続してもらう話が出たが、相続税の関係もあり、建物は兄が100%(持分1/1)、土地は兄と弟で50%(持分1/2)ずつとした。弟はその分、現金を多く相続することになった。なお、弟は兄に対してかなり譲ったという気持ちであったとのことだった。
それから何も問題なく過ごしてきたが15年目を迎えた頃、兄から家が築40年近くになりさすがに古くなってきたので建て直したい、ただ、その際に気になるのは土地の弟の持分のことで、子供の世代にきちんと家と土地を残したいので、兄弟間でこの持ち分を解消したいという連絡を受けた。
弟としては共有持分を持っていてもしょうがないので解消するのが良いだろうと伝えると、兄から「建て替えで使うお金を除くと1,000万円前後しかないから、それで承諾して欲しい」という依頼が来た。事前に不動産会社の査定を出して持分1/2でも3,500万円ぐらいはする、と聞かされていたので、さすがに安すぎると思い、「その金額は安すぎる。弟以外に言ったらもう連絡しないで欲しいと言われる金額だよ」とムッとして拒否をした。一方で、そのように拒絶された兄も「あのような言い方はない」と怒り、その後、3年間はこの話題も含めて言葉を交わすことなく過ごしていた。
しかし、今年に入ってさすがに家に傾きも見られてくるようになったことから、兄の妻からの依頼で(兄の)息子が弟に連絡を取り、交渉を再開することになった。弟の方もさすがに1,000万円では安いが必ずしも時価ではなく安くても良いと返事をして、金額を含めて検討をしていくことになった。
家の建て直し費用は約2,500万円、それに加えて土地の持分費用は1000万円以上かかるので、自己資金3,500万円では足りない計算になる。当初はネットで調べつつ対応していこうとした息子だったが、無理して持分を買わなくとも良いという思いも強くなり、また、持分を買うにしてもさすがに自身の力だけは難しいことが分かったとのこと。そこで、費用は支払ってもプロに入ってもらった方がスムーズと考え、ネットで見た数社の一つとして、弊社に相談をいただけることになった。
問題点:
1)土地の持分を買い取るメリット/買い取らないデメリットは何なのか
2)自己資金で足りない分はどうしたら良いのか
解決方法:
まず弊社からは持分を買うメリット/買わないデメリットを伝えた。デメリットは弟との関係によって共有物分割や地代支払いの訴訟やトラブル、また、税務上のリスクを抱えたままになること、またローンその他何かと共有者である弟の署名捺印が必要になることを説明。しかも、今はまだ兄弟での所有であるが、代が変わっていくと従兄妹との関係、その先は・・と考えると、いつかは利用や管理、処分もできない不動産になる可能性を指摘。長く住んでいきたい土地の場合は所有管理上、共有状態を解消した方が正しいとアドバイスをした。一方で、買うメリットは100%自己所有(父親である兄と自分たち)になる他、前述のデメリットの解消などを上げた。幾つかトラブル事例も参考までに伝えた。「今はそうでなくとも数十年後、この家を売ってどこかに住もうとしても弟様の相続人の同意が得られないと売れず、かつその時にその相続人と金銭的なやり取りがあるのなら、弟様と話をして売買した方が良い結論になる可能性があるのではないでしょうか」と伝えたら、息子はそれなら持分を買った方が良いと結論した。
続いては購入価格なので、弟と面談して、希望金額の確認を行った。当初の兄の希望の1,000万円と時価の3,500万円の中間である2,250万円だったら妥協できるとのことであった。そこで、自己資金がないので数年間で支払う分割払いを提案したところ、この年なのでそこまで時間をかけたくない、と断られた。しかし、弟からはそれならもう少し安くしても良いということで、2,050万円での同意を取ることができた。
分割払いがダメなので、後はローンしかない。そこで息子と相談をした上で、父親との連帯債務で親子ローンを利用することにした。建物にローンを利用した方が住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)を利用できるので、建て替え費用の自己資金から持分買取費用に回し、建て替え費用の不足分をローンで賄うことにした。なお、相続税対策として自己資金は息子に贈与して、土地の持分は息子に購入してもらうことになった。これでおおまかな全体計画は終了。細かくかかる経費等を計算して詳細な全体計画を作成し、父親である兄にも説明し了承を得た上で進めていった。
持分売買は息子と弟の契約になるので、兄と弟で顔合わせをしなくても済んだが、両方とも会わないのは大人気ないということで、兄も同席をして顔を合わせ売買契約して代金の支払い、登記を済ませた。終わった後は「何で喧嘩していたんだっけ」と冗談を言うほど打ち解けていたので、まずは良かった契約であった。なお、契約書の内容は一般的なものとしたが、契約不適合責任として弟の責任は免責とした。これで一連の親族間売買は終了となった。
翌年の税務対策用に2,050万円の時価根拠資料を作成。事前に兄と息子と一緒に所轄税務署に赴き、時価を相談しておき、万が一の保証をつくっておいた。
同じような事例でご相談がある場合は、是非当相談室までご相談ください。