
住宅ローンの毎月の返済額が、この数年でじわじわと重くなってきたと感じている方は多いのではないでしょうか。変動金利、固定金利ともに上昇が続いており、今後も下がる見込みは薄いのが実情です。
この記事では、なぜ住宅ローンの返済が厳しくなっているのかを整理したうえで、返済が厳しいときに検討できる5つの方法を、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。結論としては、残債が2,000万円を切っていて返済期間が短い方には、親子間売買が有力な選択肢になります。
目次
なぜ今、住宅ローンの返済が厳しくなっているのか
返済が厳しいときの解決策4選
①繰り上げ返済〜まとまった自己資金が必要〜
②借り換え〜金利上昇局面ではメリットが小さい〜
③リスケジュール〜信用情報に傷がつくリスクがある〜
④親子間売買〜返済期間を延ばして毎月の負担を軽くする〜
⑤リースバック~自宅を不動産会社に売却し、賃貸として住み続ける~
【手遅れになる前に】動き出すタイミング~滞納する1カ月以上前には動き出そう~
まとめ:まとまった自己資金がない方は親子間売買がおすすめ
【編著者・監修者】畑中 学(はたなか おさむ)


【保有資格】
・宅地建物取引士 ・マンション管理士・NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員
・公認不動産コンサルティングマスター 他
「家を守り・家を継承させる」専門/不動産コンサルタント
年平均278組の相談者に助言し、受けた依頼の解決率は94%。
不動産会社も嫌がる親族関係の解決と金融機関の融資をつける技術により、
一族の資産を守る「親子・親族間の自宅売買」を専門領域とする。

【保有資格】
・宅地建物取引士 ・マンション管理士・NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員
・公認不動産コンサルティングマスター 他
なぜ今、住宅ローンの返済が厳しくなっているのか

変動金利は、日本銀行の政策金利の上昇を受けて上がっています。政策金利は2026年10月時点で1.25%ですが、日本銀行は2.0~2.5%を目安とした段階的な引き上げを進めており、変動金利がさらに1.0%前後上がる可能性があります。
たとえば3,000万円のローンを35年で組んだ場合、金利1%では毎月の返済額は84,685円、総返済額は約3,556万円(利息は約556万円)です。これが金利2%になると、毎月の返済額は99,378円と約1万5千円高くなり、総返済額は約4,173万円(利息は約1,173万円)まで増えます。金利の1%の差だけで、支払う利息が2倍以上に増える計算です。
固定金利のフラット35も、2026年6月に3%を超え、10月には3.9%台まで上昇しました。金利が上昇している局面では、固定金利は変動金利よりも早く上がる傾向があるため、借り換えの対象としては不向きと考えられます。
日本は財政規律や対外的な競争力の面で不安を抱えており、金利が今後下がると見込むのは難しい状況です。そのため、返済が厳しい方は、金利が下がるのを待つのではなく、今の段階で対策を検討する必要があります。
返済が厳しいときの解決策5選

住宅ローンの返済が厳しくなったときに検討できる方法は、大きく5つあります。繰り上げ返済、借り換え、リスケジュール、親子間(親族間)売買、リースバックの5つとなります。毎月の返済額を減らす大きなポイントは、金利を低くすること、融資期間を延ばすこと、この2点に絞られてきますので、1番効果的な方法を選択する必要があります。
| 方法 | 主な効果 | 必要なもの | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| ①繰り上げ返済 | 毎月の返済額を減らせる | まとまった自己資金 | △ |
| ②借り換え | ほとんど効果がない | 良好な信用情報 | × |
| ③リスケジュール | 一時的に返済を減らせる | 金融機関との交渉 | ×× |
| ④親子間売買 | 返済期間を延ばして毎月の返済額を減らせる | 買主の収入等 | ◎ |
| ⑤リースバック | 自宅を売却しながら住み続けられる | 一定の資金力(経費負担) | 〇(親子間売買の次善策) |
それぞれの内容を見ていきましょう。
①繰り上げ返済〜まとまった自己資金が必要〜
自己資金でローンの一部を繰り上げ返済すると、その分毎月の返済額を減らすことができます。ただし、この方法はまとまった自己資金がある場合に限られ、実際には手元に十分な資金がなく実行できない方も多いのが現実です。
他のローンで資金を借りて繰り上げ返済に充てるという方法も考えられますが、住宅ローンはもともと金利が低いローンであるため、他のローンで借りた資金を充てても、利息の負担はむしろ増えてしまいます。繰り上げ返済方法が現実的なのは、自己資金に余裕がある方に限られます。
②借り換え〜金利上昇局面ではメリットが小さい〜
借り換えは、他の金融機関でローンを組み直す方法です。ただし、今は他の住宅ローン商品も金利が上昇しているため、金利面でのメリットが小さくなっています。
また、借り換え時の融資期間は、多くの金融機関で現在のローンの残り期間から延ばすことができません。残り20年のローンを18年に短縮することはできますが、一般的に延長が難しいとされています。金融機関によって条件が異なる場合もあるため、検討する際は個別に確認が必要です。融資期間を延ばすことが毎月の支払いを減らす最善策のため、借り換えは、毎月の返済額を減らす目的には合わない方法と言えます。
③リスケジュール〜信用情報に傷がつくリスクがある〜
どうしても返済が厳しくなった場合は、ローンを借りている金融機関に相談し、返済方法を変更してもらうリスケジュール(リスケ)という方法もあります。
ただし、リスケジュールにはデメリットがあります。借りている方の信用力が下がり、信用情報に登録されることが多いため、その後の借り換えなどが難しくなります。また、リスケジュールをした後に親子間売買を検討しようとしても、売主側の信用力が下がっているために、買主側のローン審査に悪い影響が出ることがあります。返済が厳しいと感じた段階で、リスケジュールよりも先に他の方法を検討することをおすすめします。
④親子間売買〜返済期間を延ばして毎月の負担を軽くする〜

親子間売買は、親が所有する自宅を子が買い取り、子が新たにローンを組み直す方法です。買う側である子の年齢によって融資期間を延ばせるため、毎月の返済額を軽減できる場合があります。住宅ローン控除が使えるケースもあり、所得税の控除と合わせると効果が大きくなることもあります。
一方で、登記費用や税金などの経費がかかる点はデメリットになります。
シミュレーション:残債約2,959万円のケースで比べる
もともと金利1.50%、金額6,000万円、期間35年でローンを組み、20年経過して残り15年、残債が約2,959万円になっているケースを想定します。この場合、毎月の返済額は183,710円です。
ここで金利が2.75%まで上昇すると、同じ残債・同じ残り期間での毎月の返済額は200,840円まで増加します。金利上昇前と比べて、月々17,130円の負担増です。
これに対して、親子間売買によって金利1.50%、期間35年でローンを組み直すと、毎月の返済額は90,616円になります。もともとの返済額(183,710円)からは93,094円の減額、金利上昇後の返済額(200,840円)と比べると110,224円の減額となります。ほぼ半分の返済額です。返済期間は長くなりますが、毎月の負担はかなり軽くなりることが分かります。
| ケース | 金利 | 残り融資期間 | 毎月の返済額 | 残りの 支払い総額 |
|---|---|---|---|---|
| 現在(金利上昇前) | 1.50% | 15年 | 183,710円 | 約3307万円 |
| 金利上昇後 | 2.75% | 15年 | 200,840円 | 約3615万円 |
| 親子間売買後 | 1.50% | 35年 | 90,616円 | 約3806万円 |
このように、親子間売買は融資期間を延ばすことができるため、毎月の返済が重くなっている方に効果を発揮しやすい方法と言えます。
⑤リースバック~自宅を不動産会社に売却し、賃貸として住み続ける~
家に住み続けたいものの、親子間売買が難しい場合(身内に買い手がいないなど)には、リースバックという方法もあります。リースバックとは、自宅を不動産会社に売却し、その後は賃貸として同じ家に住み続ける仕組みです。
ただし、物件価格が2,000万円を超える場合は経費が高くなりやすく、判断が難しくなります。武蔵野不動産相談室では次の3つの理由から、コストの面ではリースバックよりも親子間売買のほうが有利だと言えます。
①賃料が高くなりやすい
3,000万円の物件でリースバックをする場合、賃料はおおむね年5〜10%となるため、年間150万〜300万円、月額にすると12万5千円〜25万円になります。
②買い戻し価格が高くなりやすい
不動産会社が取得や維持にかかる経費と利益を確保するため、買い戻し価格は一般的に買取価格の125%程度になります。3,000万円で売却した場合、買い戻し価格は約3,750万円です。
③賃料は手元に残らない
住宅ローンの返済であれば、毎月の返済額のうち30~70%程度は元金の返済に回るため、資産として積み立てている面がありますが、賃料は支払った分がそのまま手元から離れていきます。
【手遅れになる前に】動き出すタイミング~滞納する1カ月以上前には動き出そう~

住宅ローンの返済が厳しいと感じたら、滞納する前に動き出すことが重要です。滞納を2回続けると、信用情報に滞納の記録が登録され、その時点で信用情報に傷がついてしまいます。
信用情報に傷がつくと、借金を理由とした売買という扱いになり、親子間売買を含めた他の対策の選択肢が狭まってしまいます。親子間売買には2〜3か月程度の期間がかかるため、滞納しそうだと感じた時点から1か月以上前には動き出す必要があります。
また、自己資金は他の対策でも必要になる場面があります。効果の薄い中途半端な繰り上げ返済に使うよりも、いざというときのために手元に残しておくことをおすすめします。
まとめ:まとまった自己資金がない方は親子間売買がおすすめ
住宅ローンの返済が厳しくなったときの解決策は、繰り上げ返済、借り換え、リスケジュール、親子間売買、リースバックの5つです。自己資金にゆとりがあり、繰り上げ返済で対応できる方以外は、売却や滞納に踏み切る前に、これらの方法を一つずつ検討してみることをおすすめします。
なかでも、残債が2,000万円を切っていて返済期間が短いために毎月の返済が重い方には、親子間売買が有力な選択肢になります。個々の状況によって最適な方法は異なりますので、返済に不安を感じ始めた段階で、一度ご相談ください。














